乳幼児が初めて出会うとまどい
自由に歩くことができるようになった1歳から2歳の幼い子どもは、自由に探索し、冒険したいと思っています。その時期の赤ちゃんは、親から離れて「おやっ」と、どうしたらいいかわからないような状況に出くわしたとき、必ず動きが止まります。子どもは好奇心を感じながら、とまどい、不安、恐れ、などを感じるのです。それらに対して、どのように対応したらいいか自分では判断できないので、次の瞬間必ず振り返ります。教室をやっていても、みんなどうすればいいかわからないときは、私の顔を見ます。
初めて出会ったことに対して、「どうすればいいのかな」と振り返った時に、自分を見てくれている人が必ずいて、どうすればいいか教えてくれる。その行動を通して幼い子どもの中に育っていく人間的な感情や感性をソーシャルレファレンシングとよんでいます。ソーシャルレファレンシングというのは、社会的に何かを参考にするとか、引用しながら生きていくという意味で、人間のそういう感性は、親や他の誰かが教えてくれることで育っていくことをコロラド大学のロバート・エムディという人が多くの追跡調査で明らかにしました。
ソーシャルレファレンシングは誇りの感情と言われています。誇りを持って社会的なルールを守れる人、つまり、誠実性のある人を育てるには、この生後半年くらいから1歳半ないしは2歳くらいの間に保護者が見守ってあげている環境をつくることがなにより大切なのです。
とは言ってもいつも目を配るということはなかなか大変なことです。子どもが起きている間はいつもいっしょにいることが必要ですし、そういう瞬間を見逃すまいと気を張っているのも大変です。ソーシャルレファレンシングがこの時期に影響を与えるということを知っているだけで、きっと行動は変わっていきます。いつもの部屋でいつものように遊んでいるときは、そんなに気を張らなくてもいい時間でしょう。ただ、外に遊びに行くときなどは少し注意をされるようにして、あまり無理のないように見守っていただければと思います。